トルコからモルドバまで列車で二晩かけて行った話②

前回 トルコからモルドバまで列車で二晩かけて行った話① - あかはらいもりの日々放浪記 

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こんちわ、イモリです。

前回、イスタンブールからルーマニアブカレストまでの夜行列車を飛び降りて、期限10秒前に奇跡的にモルドバ行きの列車のチケット引き換えに成功しました。

今回は二夜目のブカレストモルドバのキシナウ行き国際列車での旅です。

今回の移動スケジュールf:id:sartan:20240103230451j:image

とりあえず列車の出発まで30分あるので、キオスクで食料と飲み物を調達します。ルーマニアのお金(レウ)は持ち合わせていませんが普通にカードが使えました。

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電光ではない板の発車案内がいい味出してます。ただキシナウ行き、イスタンブール行きの文字がないのは残念。それぞれ国境のUngheni行きとRuse行きとして掲示されています。
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発車20分ほど前の19時ごろ、列車が推進回送で入線しました。前2両がUngheni止まりのルーマニア鉄道CFRの座席車、後ろ3両がキシナウ行きのモルドバ国鉄CFMの寝台車です。

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わかる人にはわかりますが、モルドバ国鉄側の車両は今ではかなり珍しくなった典型的なソ連の客車です。
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モルドバ旧ソ連圏ですが、現在はルーマニア語を国語としているのでサボ(行先表示板)はキリル文字ではありません。
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車内に入ると薄暗い廊下がすごくソ連みを感じさせています。
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車内の表示はロシア語です。子供の頃テレビで見たシベリア鉄道の番組で紹介されていて謎に強く印象に残っていた、停車中トイレ使用禁止 (ВО ВРЕМЯ СТОЯНКИ ПОЛЬЗОВАТЬСЯ ТУАЛЕТОМ ВОСПРЕЩАЕТСЯ) の看板にお目にかかれて興奮しました。もちろん今も垂れ流し式のトイレです。日本ではもう大井川鐵道でしか体験できない垂れ流しです。あとで使うのが楽しみだ^_^

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ロシア語で水まわりの設計図が掲示されています。故障時に車掌が直すためでしょうか。
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寝台は2段ベッド×2の普通の構造です。Купеです。
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モルドバ国鉄ロゴのカーテンが掛かっています。何故かかなり開けづらいので邪魔でした。

ついでに隣のルーマニア鉄道の座席車を覗いてみるとかなり綺麗でした。差が激しい。

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連結部を外から見るとこんな凸凹感。北斗星トワイライトエクスプレスの食堂車を彷彿とさせます。

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食堂車といえば、この列車の4両目(モルドバ国鉄3両のうち真ん中)には簡単なバーがあるそうです。しかし、走行中に行こうとしたら車両連結部が激しい揺れに加えて真っ暗で鉄のドアは重く幌もボロボロという感じで隣の車両に渡るのが怖すぎたので諦めました。

f:id:sartan:20240104045955j:image英語のブログに今も営業しているという情報があったので興味がある人は使ってみてください。

ベッドメイキングしていると、車掌がチケットの確認に来ました。国籍を聞かれたのでJapanと答えるとなんと通じない。ルーマニア語は喋れないのでロシア語でЯпония(ヤポーニヤ)と言ってみると、Japonia!と理解してくれました。やっぱり旧ソ連圏では今でもロシア語が共通語だな。ちなみにチケットはこれっきり返されません。

この列車にはルーマニアに交換留学的な活動で訪れていたモルドバの高校生団体が帰国のために大勢乗っており、自分の部屋も残りの3人はその団体の人たちでした。彼らは英語がかなり喋れました(単に優等生だからかもしれない)。彼らの間では日本で言うサンキューのノリでСпасибо(スパシーバ)と言っていてソ連を感じます。

走り始めてしばらくすると、その団体の女の子(同室ではない)がドアを勝手に開けてHiと言ってすぐ閉めました。学生ノリ×アジア人見物かと思って軽くムカついているとまたドアを開けて部屋に入って来ました。聞くと日本に興味があるそうなので色々話すことにしました。看護専門学校生だそうです。それで結局日本語とルーマニア語(再度だがモルドバルーマニア語が国語である)を教え合うなど2時間ほど話し、日付の表し方とか文字とか色々日本のことに興味を持ってくれたのでなかなか楽しかった。

ドSなのか、めちゃくちゃスパルタでルーマニア語を教え込まれたので私も自己紹介などは完璧な発音でできるようになるなどしました。最後に漢字ひらがなカタカナで名前を書いてあげたらすごく喜んでくれました。こうした交流があることも夜行列車の良さですね。(日本では避けてますが)f:id:sartan:20240104053125j:image

 

深夜3時、国境のUngheniに到着しました。出国審査は室内で済むタイプですが、この時間は本当にキツい。

ルーマニアを出国すると10分も走らないうちにモルドバ側で今度は入国審査です。いくつか質問された後パスポートを回収されます。

その後ホームから入換で側線に移動して客車が1両ずつに分割されます。何が行われるのかというと、台車の交換作業です。標準軌ルーマニアに対して、モルドバ旧ソ連なので広軌です。なので直通するためには台車ごと取り替える必要があるのです。非効率ですが、同じことをやっている所は中蒙国境など他にもあります。

作業員が乗り込んできて、台車直上の床からピンを抜き、その後車両がジャッキアップされると車体だけが浮いて線路上に残った台車を作業員が人力で転がしてどかしていきます。f:id:sartan:20240104055953j:image

構内は台車だらけの異様な光景です。f:id:sartan:20240104061122j:image

今度は広軌の台車を反対側から転がして来て、車体を降ろして取り付けます。再度入換を行なって車両を連結したら、ホームに戻って作業完了です。

最後に乗り込んできた国境警備隊からパスポートを返却されます。時刻は午前5時半です。午前3時から5時半まで起きている必要がある非常に辛い国境越えです。

実のところ私はモルドバ側でパスポートを回収されてから次の朝キシナウ到着前まで寝てしまったので、台車交換の記憶はジャッキアップの揺れで地震の夢を見たこと以外ありません。パスポートは起きたらテーブルに置かれていました(危ない)。

なので写真は復路に撮ったものです。ちなみにブカレスト行きの国境越えは夜8時〜10時ごろなので辛くありません。

ちなみに一応国境なので写真を撮っているのがバレるとかなり強めに怒られるという前情報がありましたが、自分は運が良かったのか特に何も言われずにすみました。撮る場合は自己責任でお願いします。

 

朝、7時半ごろに車掌に起こされました。定時に終点に到着するようです。f:id:sartan:20240104061900j:image

9月11日午前8時10分、イスタンブールから2晩36時間の列車の旅を終え、モルドバの首都キシナウに到着しました。寒い。
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飛行機なら2時間かからない距離でLCCもあるので、普通はイスタンブールからキシナウまで鉄道で行くという選択肢は取りませんが、特にブカレストからキシナウまでの列車はソ連客車、台車交換、国境越えというオタにはたまらない要素が詰まっているので非常にオススメです。f:id:sartan:20240104063917j:image

 

キシナウ駅、石造りの駅舎がかわいい。

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今日夕方の列車でルーマニアに戻る予定なので、先に帰りのチケットを窓口で買います。VISAマークなどがあるのでカード払いできると思ったら、現金のみの対応でした。切符作成してもらっている間に両替に行きます。すぐ横に両替屋があります。レートも特に悪くはないです。ブカレストまでは664モルドバレウ(5500円ぐらい)でした。f:id:sartan:20240104061913j:image

切符がなんと手書きの補充券の冊子だったのには驚きました。(往路同様回収されてしまいましたが)

最後にその補充券の画像で終わりにします。次回は未承認国家沿ドニエストル共和国潜入編です。

 

表紙 ルーマニア語ロシア語ドイツ語表記です。f:id:sartan:20240104071136j:image乗車券部分f:id:sartan:20240104071123j:image寝台券部分f:id:sartan:20240104071126j:image指定券f:id:sartan:20240104071133j:image権利などの説明f:id:sartan:20240104071129j:image