こんちわ、イモリです。
2023年9月に、モルドバ東部のウクライナ国境地帯に存在する未承認国家「沿ドニエストル共和国」に行ってきました。今回はその旅行記です。
沿ドニエストル共和国に関わる歴史はざっくり言うと、
ソ連崩壊後、ルーマニア系が主であるモルドバに組み込まれたことに、工業地帯であるドニエストル川沿岸に技術者などとして来ていたロシア系住民が反発し、戦争の末1991年に独立したが、ロシアを含め国連加盟国は未だ一切承認していない。
と言った感じだ。詳細はwikipediaなどで調べてほしい。
この沿ドニエストル共和国、なかなかクセが強く、まず国旗がソ連国旗に緑の帯なのだ。未だに国家として鎌と槌を国旗に取り入れているのはここだけだ。また独自通貨を利用していたりとなかなか面白いのだが、追って説明したいと思う。
沿ドニエストル共和国に行く場合、モルドバの首都キシナウから小型の乗り合いバス"マルシュルートカ"を利用するのが現在最も簡単なアプローチだ。
戦争が始まる前はキシナウorオデッサから国際列車を利用するアプローチもできたが、運行停止で現在はできなくなっている。
そんなわけで9月11日朝8時10分、私はブカレストからの夜行列車でキシナウに到着した。
キシナウから沿ドニエストル共和国の首都ティラスポリまでのマルシュルートカはGara Centralaから出ている。Gara (駅)といっても鉄道の駅ではなくバスステーションだ。Garaまではキシナウ駅から歩いて15〜20分ほどである。キシナウの街は建物といいトロリーバスといい旧ソ連地域によくある感じだが、一国の首都としてはなかなか小ぶりで、規模感的には北見以上旭川未満といったところだろうか。
道中のコスモスホテルもソ連時代の建築だ。
マックの入った商業施設の裏にある、市場?の一角にGaraはあった。 当時36時間の列車の旅の直後で疲弊しており撮影を失念したが、敷地内に入るや否やニコニコのおっちゃんにTiraspol?と聞かれチケットカウンターに誘導された。トルコの後に来ていたためボッタクリに警戒したが、料金表通りの価格で普通に親切なだけだった。ここに限らずモルドバや沿ドニエストルの人達はみな非常に親切で、トルコ人の常に裏のある偽善を浴び続けた身には天国のように感じられた。
価格は忘れてしまったが100レウ(850円)より少し高かった気がする。多分120レウ(1000円)だったかな?ちなみに便数は30分に1本以上出ているので時間は気にしないで大丈夫だ。
マルシュルートカの中はこんな感じで定員は20人無いぐらいの小型バスだ。マルシュルートカ自体はモルドバに限らず東側諸国によくある。ドライバーはさっきのニコニコのおっちゃんだった。
出発時点の乗車率は半分程だったが途中でも乗客をどんどん拾っていく。出発から15分ほどしたころ、後ろから衝撃を受けて片側3車線の道路の真ん中車線に停車した。追突されたようで、ドライバー同士が道路のど真ん中で揉め始めた。場所が場所だけに別の車に追突されないか心配したが、15分ほどで再出発した。後で見た限りさすがメルセデスで全く業務に支障ない程度の損傷だった。
特筆することはない東欧の風景を東へ進む。途中の一面の小麦畑はまあ綺麗だった。
出発から1時間15分ほどしたころ、特に何もされないがモルドバ側の検問所があった。そこを通り過ぎてすぐ、沿ドニエストル国旗とロシア国旗がはためく国境ゲートに到着した。乗客は全員下車して入国審査を受ける。目的と滞在日数だけ聞かれ、ビザが発行される。このビザは出国時に必要なのでなくさないように。出国時に回収はされないので持ち帰りは可能だ。
ビザはロシア語と英語で書かれている。日帰りの人の滞在期間は約12時間みたい。宿泊する場合は中央アジアみたいに投宿後に警察か何かに滞在届を提出しに行く必要があるそうだ。日帰りならダミーの滞在先がなくても問題ない。(英語は通じた)
沿ドニエストルに入った途端、言語が全部ロシア語になった。これは電気屋の″ハイテク”
こちらは沿ドニエストル経済を牛耳っている財閥シェリフのスーパー。写真はないがシェリフのサッカースタジアムなどもあった。
凱旋門らしきもの
マルシュルートカの終点であるティラスポリの(鉄道)駅前に到着。
事前情報にあった駅に併設の両替所に行くと、まさかの閉店。なんか今日だけ休業という雰囲気でもなかったのでもうやってないのかもしれない。
早速困ったが、この後歩いて5分のシェリフスーパー内にシェリフの銀行が併設されていて、そこで問題なく両替できた。さすがシェリフ
100ルーブルとかの紙幣もあるが、全部同じ人の肖像だった。裏の柄は違う
1ルーブル=7円ぐらい。モルドバレウの他、ドル・ユーロもレートがあったので両替可能と思われる。日本円は多分むりかな。
ちなみに駅構内には入れるが、今はおそらく列車は来ていないようだ。
時刻表にはキシナウ行きやすぐ隣ウクライナのオデッサ行きのほか、モスクワやムルマンスク(!)行き、ベラルーシのミンスク行きなどの長距離列車も並んでいるが、今は運休中のはずだ。
散歩開始である。
いかにもソ連のアパート
こちらは高級マンションらしいが、あまり人が住んでるようには見えない。
トロリーバスも走っているが、トラムはない。
中心街の公園まで来た。沿ドニエストル建国33周年
沿ドニエストルは国連加盟国からは全く承認されていないが、同じ未承認国家であるアブハジア、南オセチア、アルツァフと相互に承認しているので、その3か国の旗があった。アルツァフ(またの名をナゴルノ=カラバフ)はこの少し前に訪問予定だったが、アゼルバイジャン、アルメニア滞在中も開戦間際のようなきな臭さを感じた(特にアルメニアの右翼たちによる演説は何言ってるかわからないけどなかなか心に響くものだった)ので訪問を取りやめた。
結局予感は的中したようで、このすぐ後にアゼルバイジャンの侵攻によってアルツァフは崩壊した。今となってはエレバンの大使館でアルツァフビザだけもらっておけばよかったと後悔している。
こっちの旗はロシアと沿ドニ以外何かわからない。まあいいや
ロシア国内ではほぼ見れないレーニン像も、ソ連の後継を自負する沿ドニでは首都の庁舎前に健在である。このレーニンちょっと粗削りだな。
探せば他にもレーニン像があるようだが、事前情報にあった観光案内所がちょうどお亡くなりになられていた(後述)ので、レーニン像マップが手に入らず、疲労もあって探す気力もなかったのであきらめた。最大のレーニン像はこれのはず。
横には戦争博物館みたいなのがあったが、休館日だった。
エカテリーナ二世の像もある
国名の由来であるドニエストル川。しょぼい。
Ⅰ LOVE NY的なやつ。ちゃんとロシア語一人称のЯになってる
多分唯一のお土産屋。やっぱりスターリンとかそういうソ連みを押し出したものが多い。とりあえずマグネットとソ連好きの友人用のお土産だけ買った。
勝利の顔 (独立に功績あった軍人かな?)
たぶん裁判所
著作権大丈夫か?あと国際ドメインは普通にモルドバの.mdなのね
かわいい青の建物
Amazonこんなとこにまできてるの?
沿ドニエストルといえば世界唯一のプラスチック製コイン。すでに一般流通はしてなさそうだったが、銀行で両替してくれる(手数料2ルーブルかかった)
全種類セットでも150円程度なのでお土産におすすめ。
1,3,5,10ルーブルの4種類。3ルーブルとかいうトチ狂った単位のコインが面白い。
裏面はこんなかんじ
個人的な追加の興奮ポイントとして、両替手数料のお釣りで5カペイカコイン×4枚をゲット
本国ロシアでは全く価値がなくなってしまいまず見れない、ルーブルの補助通貨"カペイカ"(1ルーブル=100カペイカ)が沿ドニではまだ現役。でも銀行以外の店ではカペイカ単位は釣り銭省略されることが多いと思われる。
ちなみに沿ドニエストルで調べると記事に必ずでてくる観光案内所につたないロシア語で道を聞いてたどり着いたが、既に撤退していて、一応中に入ってみたらおばちゃんに爆笑された。
余談だが、沿ドニエストルでは若者含めて英語は通じたらラッキーぐらいで、基本はロシア語になる。ネットもモルドバのSIMが通じなかったので、ロシア語の日常会話ができるようにするか、事前にGoogle翻訳のロシア語をダウンロードしておいた方がよいと思う。最低限キリル文字の音がわかれば看板も多いので迷うことはない。そもそもティラスポリの中心街はそんなに広くもないので別にロシア語がわからなくても致命的ではない。
街を一通り廻って駅まで戻ってきた。
跨線橋では5km先のウクライナからの携帯電波が若干通じる。ヨーロッパ大体OKみたいなSIMを使っていたのでここだけネットが使えた(ほぼ使い物にならない遅さだったけど)
帰りもたまたま行きと同じニコニコ運転手のマルシュルートカだった。チケットは駅の出札で購入する。沿ドニルーブルがなくてもモルドバレウも使用可能なのでありがたい。
ドニエストル川を越える鉄道橋がロシア国旗色
ちなみに、沿ドニ国内にはロシア軍がPKOで駐留しているので、ロシア兵の姿をみかけることがある。また、車窓からロシア軍のベースも見える。でもまあ街は平和そのものだったのでそんなに怖がらなくて大丈夫だと思うが、たまに爆撃音が聞こえるという話もあるのでオデッサあたりの戦況によっては渡航は控えた方がよさそうだ。
モルドバとウクライナの国境という位置的に日本から行きづらい場所にあるが、入国の難易度自体は低いし、ソ連の田舎町感を感じられるので、興味があったら話のタネに行ってみると面白いと思う。いつ急に無くなるかもわからないし。
個人的には楽しめたけど、まあでも普通の旅人にはおすすめはしないですね。
さいごに、沿ドニエストルは首都ティラスポリ市内の治安は非常に安定していましたが、ウクライナのすぐ隣かつロシア軍駐留地域なので、ウクライナからの攻撃を受けないとも限らないのと、現在外務省の渡航情報はレベル3(オレンジ)なので、行く際は自己責任で。
あと万が一パスポートなくすと駐モルドバ大使館も介入できないので多分割とやばいです。
それでは。