この記事の続き
こんちわ、イモリです。
元々やばかったアルバニア鉄道はここ数年で限界まで衰退し、遂に1路線のみ、金土日曜日に1往復ずつ、週3往復のみの運行となってしまった。
そんな明日にでも廃線になってしまいそうなアルバニア鉄道にわざわざ乗ってきたお話である。
9月17日 日曜日 朝4時半、エルバサン駅6時発のドゥラス行きの列車に乗車するため、宿から5km離れた駅に歩いて向かう。
電灯も少ないので暗く、治安も良くはないが、それ以上に昼間おとなしかった野犬たちが凶暴化していてうなってくるのが怖すぎる。野犬自体は多くの地域で見てきたが、エルバサンの野犬は平均してかなり獰猛だ。
途中道の反対側でゴミを漁ってる大型犬がいたので刺激しないよう静かに通ろうとしたが、自分の影がかかってしまい牙をむいて吠えながら走ってきた。あーこれ噛まれるやつだ
とりあえずクマの場合と同じように怯まず目を合わせ、そういうことしたらダメでしょなど話しかけながら後ずさりするも、見合ったままなかなか諦めてくれない。
2分ほど見合っていた頃、車が2台走ってきたのでタイミングを見計らって道の反対側にダッシュで渡る。すかさず追いかけてくる野犬。車が急ブレーキをかける音。野犬はギリギリ轢かれず一回元の側に戻る。車が通り過ぎるとまたこちらに向かってきた。そして2台目のトラックにも同様に轢かれかける犬。さすがにビビった猛犬は立ち去って行った。助かった。
市街中心部までたどり着くと野犬はいるが街灯で明るくなって幾分安心して歩けるようになった。
駅に着くと昨日の元ドイツ鉄道客車2両に、旧東側諸国ではお馴染みのチェコ製ディーゼル機関車が連結されていた。
余談だが、駅構内も野犬の縄張りになっていて一時睨み合いになった。基本的に怯まず適切に対処すれば野犬に噛まれることはあまりないが、もし噛まれたら消毒と狂犬病ワクチンを忘れずに。
エルバサン駅
切符は駅舎の道路側(駅構内と逆側)の窓口で売っている。
時刻表と窓口の営業時間案内。朝6時発の列車が最終列車なのに10時半まで営業しているのは謎。
運賃は終点のPlazh(ドゥラス駅は工事中のため、数km手前のPlazhが終点になっている)まで145レク(250円弱)と格安だ。
少しずつ人が集まってきた。週3往復でも使う人はいるみたい
客車内は電気が供給されておらず暗い
窓はたまに割れていて、そこから入ったと思われる葉っぱと枝が床に散らばっていたり、座席もボロボロでホコリっぽい。でもゴミが落ちていないので汚くはない。
投石の痕跡もある
6時3分、汽笛が鳴り列車はゆっくりと出発した。程なくおばちゃん車掌が検札に来る。切符に印をつけ、少し破って返された。
おばちゃん車掌は暇つぶしにきた娘と一緒に乗務していた。日本人は珍しいからか娘さんにインスタ交換を求められたので応じたが、投稿を見る限り結構裕福なご家庭のようだ。週末になるとギリシャのテッサロニキやイタリアに旅行しているストーリーが流れてくる。前日に地元民が言っていた通り、車掌をやっているのは完全に暇つぶしのバイト感覚なのだろう。
2両編成の1両目と2両目の前半分に地元民が20人ほど乗り込んでおり、2両目の後ろ半分に自分とスイス人鉄オタ、そして多分アメリカ人の3人組の外国人5人で固まっていた。
かなりゆっくり走っているので思っていたよりは揺れない。わかってはいたが景色も特に良いわけでもない。ただ乗ったことに意味があるのだ。
週末に1日1往復ずつしか運行されないにも関わらず、どの踏切でも遮断桿を私服のおっちゃんが手動で上げ下げしていた。彼らも小遣い稼ぎにやっているのだろう。
客車の最後尾はドアも落下防止のバーなどもないので開放的だが落ちそうで怖い
ここは駅なのか(多分反対側にはホームがある)
途中のKavajë駅には貨車が放置されていた。貨物列車はいつまで走っていたのだろうか
8時50分、列車はドゥラス市内の終点Plazh駅に時間通り到着した。エルバサンから2時間50分、表定速度は26.5km/hほどだ。
これにてアルバニアの運行中の鉄道路線は完乗したことになる。まさか日本の鉄道より先に外国の鉄道を完乗するとは思わなかった笑
先頭の機関車は写真を撮る間も無くさらに先の方へ単機回送されて行った。
ドイツ本国ではもう見られない貴重なDBの普通客車
Plazh駅は元々は主要駅ではないためまともな駅舎はなく、プレハブの切符売り場だけがあった
Plazh駅の場所
車窓から海はほとんど見えなかったが、ビーチまでは駅から歩いて数分だ。
一緒に列車に乗っていたスイス人大学院生の鉄オタと近くのカフェレストランで朝食をとり、旅行情報を交換するなどした。
円安が酷くて対ドルでコロナ前の2/3程の価値になってしまったと嘆いたからか、トイレに行っている間にスマートに奢られてしまった。ありがとう。イケメン。大好き。
イケメンと別れたあと、ビーチで4時間ほどくつろいだ。すごく遠浅でかなり沖まで歩いていける。ただ海の色はあんまり綺麗じゃなかった。
遅めのランチをピザレストランで食べた。対岸なだけあってイタリアンの店が多い。
港近くにはかつての貨物線と思われる線路が残っていた。
公式には工事中とはいえ、どうせ進捗0で直す気もないんだろと高を括っていたら、本線の敷地内には新品のコンクリート枕木が並べられていた。新しいレールも用意されていた。
衰退著しいアルバニア鉄道だが、まだ一応やる気はあるらしい。来年には全部廃線になっていそうと思っていたが、かすかな兆しが見えた。
スイス人鉄オタ情報として、モンテネグロと繋がっている線路も貨物専用で復活する予定らしいが、前日にバスから見た限り特に動きは見えなかったので多分立ち消えになると思う。
ドゥラスからはイタリアのバーリに夜行フェリーで渡る。他にアンコーナまでのフェリーもある。
フェリーターミナルには現在工事中のドゥラス駅までの案内看板があった。アクセスは確かに良いが、休止中でなかったとしても週3便では物好き以外フェリーから乗り継ぐ人はいないだろう。
繰り返しとなるが、2023年現在のアルバニア鉄道は金土日曜に、往路がエルバサンを早朝に出発、復路がドゥラスの街外れPlazhを昼過ぎに出発している。
アルバニア鉄道に乗りたい場合はこの記事とは逆の復路便に乗車してエルバサン到着後、徒歩15分ほどのバスターミナルから首都ティラナに脱出するのが最適解と思われる。
工事などの投資は行われていたとはいえ10年後に運行を継続しているとはあまり思えないので、アルバニア鉄道に興味のある方は早めに訪問されたし